カルシウム代謝の調節因子とリンの恒常性 ~骨の作られ方~
今日は骨の生理学や骨が作られるまでの順序として、カルシウム代謝の調整因子をいくつか述べてみます。
まずは、基本的なカルシウムの役割から。
<カルシウムの役割>
血中のカルシウムは、約9~11mg/dlあり、その内ほぼ半分はイオン化し、他の大部分はアルブミンと結合している。臨床的にはイオン化カルシウムのレベルが重要で、イオン化カルシウムのレベルを調節している全身的因子は副甲状腺ホルモン、カルシトニン、活性型ビタミンDである。
骨はカルシウムやリンなどの無機質の貯蔵庫としての役割を持ち、カルシウムは骨や歯の形成と維持、筋収縮、神経興奮の伝達、血液凝固、乳汁生成など様々な生命活動の場で重要な役割を果たしている。
経口的に摂取されたカルシウムは、まず小腸で吸収され、骨に貯蔵される。一部は遊離し、体の諸機能に関与するとともに、腎臓から体外に排出される。
<カルシウム代謝の調節因子>
1.上皮小体ホルモン(パラソルモン)の作用と役割
①破骨細胞の形成と活性を促進し、骨からのCaの血中への遊離を促進
②骨芽細胞・骨細胞を膨大させ血中Caの骨への移動を抑制
③腎臓の尿細管からのCaの再吸収を促進し、血中Ca濃度を増加
④ビタミンDから活性型ビタミンDへの変換を早め、腸管からのCa吸収を促進
2.カルシトニン(CT)の作用と役割
甲状腺(濾胞の外側にある濾胞細胞(C細胞))から分泌されるホルモン
①破骨細胞の形成の活性を抑制し、骨吸収を阻害
②骨芽細胞・骨細胞を収縮させ、血中Caの骨への移動を促進し、骨新生を促進
③骨吸収が異常に亢進し、血清カルシウムが上昇した場合、骨からのCaの放出を抑制して、血中Ca濃度を減少させる
→食後の高Ca血症を抑制したり、妊娠中に母体の骨が余分に失われるのを防いだりするのに役立っている。
※上皮小体ホルモンとカルシトニンは、互いに拮抗的に働く。
3.活性型ビタミンDの作用と役割
代謝に関係するホルモンで、骨にとって重要なビタミン
ビタミンD作用を示すために、肝臓で水酸化された後、腎臓で活性型ビタミンD(最終活性物質である1,25-D)に変わる必要がある。血中に分泌された活性型ビタミンDは、腸管からのCaの吸収を促進し、骨へのCa沈着を進め、骨形成を促進する。一方、血清Ca濃度が低下すると、骨髄の葉骨細胞の骨吸収を促進して骨のCaを血中に放出し、血清Ca濃度を高めるという両面の働きをする。
胃切除後にはビタミンDの活性化障害とカルシウムの低下をきたしやすく、骨軟化症や骨粗鬆症を生じることがある。
→破骨細胞と骨芽細胞の双方を活性化し、骨の代謝を活発にする。
【リンの正常値と恒常性】
血清中のリン濃度は、小児で4~6.5mg/dl、成人で3~4.5mg/dl。成人で1日の必要量はカルシウムと同じく600~800mgであるが、燐の腸管での吸収機序は、明らかでない。腎尿細管での再吸収は、副甲状腺ホルモンにより抑制される。反対にカルシウムの再吸収は促進され、カルシウムとリンは拮抗的に調節されている。
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