⑳心臓疾患のリハビリテーション 歩行とジョギングなどの適した運動の種類
4.心疾患の運動療法の種類
慢性期運動療法として使われる運動には、トレッドミルやエルゴメータ、歩行―走行、スウイムゴメータやローイングマシーン、ウォーキング、ジョギング、水泳、自転車、ボート漕ぎ、あるいは集団で行っている卓球、ミニテニス、バレーボール、スキーなどがある。
スポーツは習熟と技術を磨く楽しみを伴い、なおかつコンプライアンスがよいとされています。運動がストレスを除き、自律神経系にまで働きかけることを期待するならスポーツを採用することには大いに意味があるということです。
また家庭での、あるいは維持期の運動療法では、とくに歩行やジョギングが繁用される。 その理由はいつでも・どこでも・誰でもが一定量の運動領を図りやすいということです。
このような等張性(isotonic)の運動は心指数を増し、さらに心拍出量を増加させて容量型の循環反応をもたらす。
等尺性(isometric)の運動は、末梢血管抵抗を高めて血圧上昇に働き、1回拍出量の増加は少なく、圧負荷の循環反応を生ずる。この場合、前負荷が限られると急速な循環不全を呈する危険性がある。
このように等尺性の運動は筋力は増すが、酸素摂取量を高めることは少ないとされる(表)。腹圧のかかる、いわゆる“歯をくいしばる”ような運動は、リハビリテーションには好ましくないということになる。
以下に、等張性収縮と等尺性収縮について説明します。
1.心疾患リハビリの動的(等張性)運動
動的な運動とは、簡単に言うと筋肉を収縮したり弛緩させたりする随意筋運動いう。
(例:走行、マスター2階段法,トレッドミル法,エルゴメータ法などの各種の運動負荷法)
徐々に運動量を増加していったときの酸素消費量の増加に対して三つの対処方法がある。
①肺による総換気量の増加
②心拍数の増加
③心拍出量の増加
心拍数の増加ではまかないきれないようになると、 1回拍出量も増加させるようになる。
長い間安静にしていた人は,運動時の1回拍出量の増加が少なく,主に心拍数の増加にたより,これが動悸として自覚される。
一般には運動で動脈血酸素飽和度は低下しないが、静脈血酸素飽和度は次第に低下する。つまり、多くの酸素が組織に取り込まれ、動脈血と静脈血の酸素較差が増大する。
心臓がわるく,心拍出量の増加が十分にできない人は,静脈血酸素飽和度の低下が著しい。
運動中の血流の再配分
安静時に骨格筋は心拍出量の15~20%の血液の供給を受けており、運動すると骨格筋への血流量が急増する。
急性心筋梗塞などで長い間安静にしていた患者は,運動時にすぐに骨格筋への血流量を増加させたり,血圧を維持する神経内分泌反射が弱くなっているため、めまいや、運動時に疲労を生ずる。
運動の間,脳血流量はほぼ一定に保たれ,心臓への血流量は増加する。これに対して,腎,消化器などへの血液量が減少する。食後は,消化器系臓器に多くの血液が流れているが,このときに運動して消化器系臓器への血流量を減らそうとすると無理があり,狭心症や腹痛を起こす。
H+イオン濃度の増加,体温の上昇
運動によって生じた末梢での炭酸ガス濃度の上昇,乳酸の産生などによって起こる。
ヘモグロビンより酸素を放出させやすいように,解離曲線を右に偏位する働きもしている。
最大仕事能は,年齢とともに直線的に低下している。65歳では20歳代の60%くらい低い。
運動量を推定する指標とされている最大心拍数も年齢とともに低下し,ほぼ「最大心拍数=220-年齢(歳)」の式が成立する。
運動の強さと平行して最大血圧が上昇し,最大仕事能のときは170~200mmHgにも達するが,この間,最小血圧の上昇はわずかである。
加齢により最大血圧の上昇が強くなり,虚血性心疾患でリハビリテーションの進んでいないときは最大血圧が異常に上昇する
加齢により心拍出量,1回拍出量の増加が少なくなり,肺毛細管圧,右室拡張終期圧の上昇がみられ,心機能の低下が認められる。
動的運動のときは一般に立位で行う。臥位より立位にすると500~700m1の血液が,重力で急速に下半身に移動する。このため心臓に戻ってくる血液量(静脈血還流量)が減少し,心拍出量が減少する。正常人では,このときに末梢動脈が収縮し,最大,最小血圧の減少を小さくするが、老人や長い間臥位であった人はこの反応がスムーズになされず起立性低血圧を生ずる。
2.心疾患リハビリの静的(等尺性)運動
- エネルギーの消費量はさほど多くないが,血圧の変化はかなり大きい。
- 心拍数の増加は,動的運動ほど著明でない。
- 最大血圧の上昇はきわめて強く,動的運動のときには下降する最小血圧も上昇する。
- 両者の上昇により外的心仕事量の増大が大きく,疲労,狭心症の誘発の原因となる。
静的運動時には・・・
息をこらえている→胸腔内圧が上昇→この圧の上昇が伝播し一時的に動脈圧が上昇(この時期,一時的に心拍数が減少する。)→胸腔内圧の上昇による静脈血還流量の減少→平均動脈圧の下降→これに対して反射的に末梢動脈が収縮→心拍数が増加して,血圧の下降をくいとめる
解除
血圧が一時下降→心拍数が一時増加した後,跳ね返り現象を示す→正常に回復
これらの変化は排便などにさしても起きており,重症の狭心症ではこのときに発作を生ずることがよくある。
ウォーキングとジョギングはどちらがいいのか?
ジョギングは患者の許容運動負荷量を超えて、虚血、不整脈を誘発する可能性があり、有酸素的運動の典型であるウォーキングが注目されている。
ウォーキングの生理学
歩行速度とエネルギー消費量の関係について、 120~130m/min以下では歩くより走るほうがエネルギー消費が多く、逆にそれ以上では歩くほうがエネルギー消費が多い。
また、歩行のみをみた場合、エネルギー消費は75m/minに最小値を示すが、60~100m/minの変化はきわめて少ない。歩行―走行の運動量は表に示されるような結果であった。
歩行ではステップが1段変化する(スピードは10m/minふえる)ごとに1ml/kg/minの酸素消費量、5分間の運動で1.5kcalの増加をみる。また、歩行100m/minより走行のほうが楽であるという患者がいる。
運動処方で注意しなければならない点は、冠動脈疾患患者は、どのような運動においても攻撃的な性格を示すことが多いことである。ときには狭心症発作が誘発されるまで続ける。このようなことがないように、初期目標心指数の設定と、その徹底は重要である。
スポンサードリンク
スポンサードリンク
- No Tag