筋肉の種類(骨格筋/心筋/内臓筋)と筋肉の働き(動筋/拮抗筋/固定筋)等の特徴
1.筋の種類
筋は線維状の筋細胞の集まりで次の種類がある。
| 骨格筋 | 心筋 | 内蔵筋 |
構造 筋線維の長さ 筋線維の太さ 単収縮持続時間 興奮の伝導速度 所在 神経支配 機能 | 横紋筋 2~20cm 50~100μm 0.1秒 2~4m/sec 腱により骨格に付着 運動神経 随意運動 | 横紋筋 100μm 10~20μm 0. 5秒 0. 2~0.4m/sec 心臓壁 自律神経 周期的拍動 | 平滑筋 100μm 2~10μm 1~10秒 0.02~0.04m/sec 内臓、血管、皮膚 自律神経 自律運動 |
【筋の働き】
筋収縮により生じる運動はその作用により次のように分類される。
(1)動筋の特徴
ひとつの筋の求心性収縮または遠心性収縮により関節運動が起こるとき、その筋を動筋という。座位で膝関節の運動をするときの大腿四頭筋は、膝伸展の求心性収縮による動筋であり、膝伸展位から屈曲位に戻す運動では遠心性収縮による動筋となる。
動筋は主動筋と補助筋からなるが、明瞭な区別はできないこともある。
2~多関節筋では、一般に遠位関節の運動で主動筋となることが多い。ハムストリングスは膝関節の屈曲と股関節の伸展に作用するが、膝屈曲では主動筋となるが、股伸展では補助筋になる。上腕二頭筋は肘関節の屈曲と肩関節の屈曲の働きがあるが、肘屈曲では補助筋になる。
(2)拮抗筋の特徴
動筋と逆の働きをする筋を拮抗筋という。
座位で膝関節の伸展のときの動筋は大腿四頭筋であるが、このときの拮抗筋はハムストリングスである。
膝伸展の速度が遅ければハムストリングスの筋放電はみられないが、速ければ拮抗筋による遠心性収縮を生じる。また、膝伸展位で大腿四頭筋が最大収縮すると、拮抗筋も同時に静止性収縮がみられる。これを同時収縮という。
(3)固定筋(安定筋)の特徴
関節運動を行うとき、この関節以外の関節や骨を静止性収縮で固定する筋を固定筋または安定筋という。
背臥位で頚部を挙上(屈曲)するときの動筋は頚部の屈筋群であるが、腹直筋は体幹を固定するために静止性収縮を行う。また、小指を外転するときの動筋は小指外転筋の起始部である豆状骨を固定する。
(4)共同筋の特徴
広義ではひとつの運動に参加するすべての筋群をいう。
(5)中和筋の特徴
狭義の共同筋には中和筋がある。
2つの筋がひとつの運動に作用するとき、拮抗する方向の力のベクトルが相殺、中和される。
左右の外腹斜筋が同時に求心性収縮をすると左右の垂直方向の力が体幹の屈曲力に作用する。しかし、左右の水平方向の力は大きさが同じで向きが逆のため中和される(図3-9)。このような現象は胸鎖乳突筋による頚部の屈曲でもみられる。
(6)筋の逆作用の特徴
通常の求心性収縮によって生じる運動は遠位部が近位部に近づく。
逆に近位部が遠位部に接近する運動を(筋)の逆作用またはリバースアクション(reversed action)という。
例えば、上腕二頭筋の求心性収縮は通常、前腕が上腕に近づく屈曲運動である。
鉄棒で懸垂運動をすると肘関節は屈曲するが、上腕が前腕に接近する。このような作用が(筋)の逆作用である。腸腰筋の通常の作用は股関節の屈曲でもあるが、大腿部を固定して腸腰筋が求心性収縮をして骨盤が前傾する運動も(筋)の逆作用である。
(7)筋肉の弛緩の特徴
筋に収縮がみられない状態が弛緩である。筋が弛緩していても筋の弾性による緊張がある。弛緩した筋を他動的に伸張すると筋張力はさらに増大する。
(8)腱作用の特徴
手指を握った状態で手関節を他動的に掌屈すると手指が伸展する。
これは手指の伸筋が伸張されることで生じる現象であり、腱作用とよばれる。手関節の最大掌屈位での手指の屈曲の運動は制約される。
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